2025.11.16

─ヨーロッパのコンテンツキュレーター・ジャンフランコが語る、日本の工芸とクラフトマンシップの未来

はじめに

なぜ日本の工芸にはこれほどまでに深い精神性が宿っているのか──。
本インタビューでは、ヨーロッパ在住のコンテンツキュレーター、ジャンフランコ(Gianfranco)が、日本の素材や美意識、そして工芸文化がいかに人々の暮らしに影響を与えているかを語ってくれました。
「Resilience(しなやかな強さ)」「Regeneration(再生)」「Reverence(敬意)」というキーワードを軸に、日本の工芸が未来に向けて持つ本質的な価値について、静かに、しかし情熱を込めて語られる一つひとつの言葉には、世界と繋がるための多くの示唆が込められています。

素材とは「時間」である

Q.1. 日本とヨーロッパの素材感の違いについて、どう感じていますか?

素材とは単なる「モノ」ではなく、「時間」そのものだと思います。
たとえば陶器、木、ガラス、金属などは、日欧のどちらにも存在する素材です。でも漆(うるし)のように、西洋では馴染みがない素材もあります。初めて漆の器を触った人は「プラスチック?」と感じるかもしれません。軽くて、つるりとしていて。
でもその背景にある「手間のかかり方」や「時間」を知ると、見る目が変わる。日本の素材には、加工に込められた「時間」が宿っているんです。素材が辿ってきた物語──それこそが文化の厚みだと思います。

隠れた部分にこそ宿る美

Q2. 日本の工芸やデザインで、特に美しいと思う点は?

見えない部分にこそ、美しさが宿っているということ。
障子の裏側、棚の奥、誰も気づかないような細部にまで、丁寧な仕事が施されている。
西洋では「技巧を見せる」ことで価値を表す文化がありますが、日本では「隠す」ことが美になる。その姿勢には深い敬意を感じます。
誰かに見せるためではなく、自分の手を抜かないためにつくられる美。それに私は強く心を打たれます。

自身でやきものをつくることも。Photo by Taran Wilkhu

美とは「意図」である

Q3.「美しさ」とは何だと思いますか?

私にとって、美とは「意図」だと思います。
シンプルなものであっても、そこに意味と意志が込められていれば、美しい。
たとえば仏教の寺院や枯山水の庭園──すべての配置に意味がある。意図がある。だからこそ、見る人の心を動かすんです。
逆に、ただ派手なだけで意味のないものには、美を感じません。
日本の工芸には、「頑張ってます!」という主張がない。むしろ控えめ。でも、その奥にある誠実さこそが、私にとっての美しさです。