── 百瀬玲亜が表現する、漆の深い艶と生命のかたち

百瀬玲亜氏の作品
はじめに
漆芸作家・百瀬玲亜さんの作品は、漆に対する既成概念を静かに揺さぶります。
植物を思わせる有機的なフォルム。水を含んだような深い艶。空間にそっと息づくような静かな存在感。
そこには、日本で長く受け継がれてきた漆芸の技法を礎としながらも、現代の生活空間に自然と溶け込む新しい表現があります。
百瀬さんには、WAJOYがキュレーションした作家の一人として、ロンドンで開催された国際的なコンテンポラリー・クラフトフェア「Collect 2026」に参加していただきました。
今回は、漆との出会い、植物をモチーフにする理由、日本人が育んできた美意識、そして作品に込める想いについて、お話を伺いました。

漆芸作家 百瀬玲亜氏
1. 原点──未知の素材だった漆との出会い
Q. 制作の原点について教えてください。
小さい頃から、ものを作ったり絵を描いたりすることが好きでした。大人になっても、何かを表現する仕事をしたいという思いは、漠然と持っていました。
私が育った場所は自然に囲まれた田舎で、植物はいつも身近な存在でした。今振り返ると、絵を描くときも自然と植物を題材にしていたように思います。
美術大学へ進学するときは、絵を描くよりも、自分の手を動かして何かを作りたいと思い、工芸を選びました。
その中で出会ったのが漆です。
焼き物であれば粘土を焼く、金工なら金属を叩く、織物なら糸を織る——そうした素材は制作工程をある程度想像できます。
でも漆だけは違いました。
実際に授業で触れるまで、どんな素材なのか全く想像できなかった。本当に不思議な素材だったんです。
そして初めて漆に触れたとき、強く惹かれたのは、その塗面の質感でした。
光沢というより、奥が見えないような深い艶があります。
その艶を生かした作品を作りたいという思いは、大学時代から今までずっと変わっていません。
百瀬玲亜氏の工房での制作風景
2. 植物を写すのではなく、生命力をかたちに
Q. 植物をモチーフにされていますが、作品を通して何を表現したいと考えていますか。
植物をそのまま漆に置き換えているわけではありません。
植物が持っている生命力や、成長していく力を一度自分の中に取り込み、それを新しい形として再構成したいと思っています。
漆には独特の瑞々しさがあります。
その質感と植物の生命力が重なったとき、美しく感じられる形が生まれるのではないかと考えています。
私にとって制作とは、植物を写すことではなく、その生命力やリズムを漆という素材を通して新たに表現することなのだと思います。
百瀬玲亜氏の作品
3. 自然の秩序と、変化の中にある美
Q. 百瀬さんにとって「美しい」とは何でしょうか。
植物を見ていると、規則正しさのようなものを感じます。
形の中にも共通するリズムがありますし、毎年少しずつ変化しながらも、また同じように芽吹いていく。
変わる部分と変わらない部分、その両方に美しさを感じます。
自然の中にある秩序や生命のリズムを、自分なりに抽出し、そのまま写すのではなく、新しい美しさとして作品にしたいと思っています。
百瀬玲亜氏の作品


